連載 帰ってきた やなさん。・28
恐怖で始まった2022年
柳田 絵美衣
1,2
1慶應義塾大学病院臨床検査科ゲノム検査室
2慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット
pp.478
発行日 2022年4月1日
Published Date 2022/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208667
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キャン! ぱすっ! 凍てつく弓道場に弦音が響く.的に向けたままの目線,的から一直線上に踏み開いた両足先.弓を押した左手と弦を離した右手が余韻を残す……残心(残身).残心は射の総決算であり,上級者の残心には品位,風格がにじみ出る,という.新年,柳田は弓を引いた余韻に浸っております…….
「そう,それ! 完璧!」弓道場に轟く先生の声.一気に余韻が消える.とにかく元気で声の大きい先生……弓道のイメージとかけ離れすぎ(涙).「狙いの付け方は,弓の左側から的が半分見えるように! 僕を見ていてください!」と先生は格好よく構え……さくっ! 土に矢が刺さる.「もう一回チャンスをください!」……さくっ! こちらを振り向くのがつらいのか,長すぎる残心に声もかけられない.「僕の解説は信じてくださいね」声の小ささが痛々しい先生に,柳田は連れと2人で教わっている.
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