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新型コロナウイルスと血栓症
後藤 信哉
1
1東海大学医学部内科学系循環器内科学
pp.1304-1307
発行日 2021年12月1日
Published Date 2021/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208556
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新型コロナウイルスと血栓症
中国・武漢から世界に広がった新型コロナウイルス感染症は,当初肺炎として注目された.しかし,肺炎治療中の武漢にて治療中の静脈血栓症の発症リスクが著しく高いことが報告され1),血栓症のリスクを増加させる疾患として認識されるようになった.
もともと,重症肺炎にて集中治療室(intensive care unit:ICU)の治療を受ける症例では静脈血栓リスクが高いことが認識されていた2).日本の現状とは異なるが,日本以外の世界で入院時から低分子ヘパリンによる血栓予防が全例に施行されている.低分子ヘパリン施行にもかかわらず静脈血栓イベントが多いことが新型コロナウイルス感染の特性と理解されるようになった.症例を蓄積すると,静脈血栓に加えて心筋梗塞,脳梗塞などの動脈血栓も多いことがわかった3).さらに,臨床検査を詳しく行うとD-dimerの上昇に代表される血栓指標は多くの症例で上昇していた4).直径数mmの動脈,静脈を閉塞する血栓は新型コロナウイルス感染の一部に起こるが,血栓症と認識されない微小血栓は感染者のほぼ全員に起こる.新型コロナウイルス感染は肺炎として認識されたが,実は微小血栓を含めれば血栓症と理解すべきである.
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