ワンポイントアドバイス
乳腺症と非浸潤性乳管癌(DCIS)の見分け方
坂 佳奈子
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1公益財団法人東京都予防医学協会がん検診・診断部
pp.522-523
発行日 2021年4月1日
Published Date 2021/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208364
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はじめに
乳腺症は『臨床・病理 乳癌取扱い規約,第18版』1)では“いわゆる乳腺症”という名称になりましたが,内容としては変わりなく,組織学的には乳腺の増殖性変化と退行性変化とが共存する病変です.いわゆる乳腺症(以下,乳腺症)は,簡単に言えば,女性ホルモンの働きによって乳腺が肥厚や増殖を起こすのが原因で,それにより痛みなどの自覚症状が生じます.乳腺症は多彩な組織像であることから,超音波所見も多彩です.月経のあるような比較的若い年代の方に多くみられることから,乳房痛を主訴に,乳癌を心配して受診してくる若年女性によくみられます.
一方,非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS)とは,癌細胞が乳管内に限局し,間質への浸潤がなく,病期分類ではステージ0であり,正しく診断されれば転移,再発はない,非常に早期の乳癌です.
DCISと乳腺症の鑑別診断は超音波検査などの画像診断では難しいことが多く,最終的には針生検などの組織診断をしなければならないことも多いのが現状です.ただし,全ての乳腺症に対して組織生検などの侵襲性の高い検査を行うことは患者の不利益となるため,可能な限りマンモグラフィや超音波などの画像診断で鑑別していくことが重要です.
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