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AS加算が設定されるまでの経緯
2018年度診療報酬改定1)では,薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)対策を推進することを目的として,抗菌薬適正使用支援(antimicrobial stewardship:AS)という観点に基づき,感染防止対策加算が見直された.すなわち,“AS加算”(100点,入院初日)が導入され,院内にASチーム(AS team:AST)を設置することが求められている.ASとは,主治医が抗菌薬を使用する際,①個々の患者に対して最大限の治療効果を導くとともに,②有害事象をできるだけ最小限にとどめ,③いち早く感染症治療が完了するために,医師・薬剤師・臨床検査技師・看護師といった4職種の連携を介して主治医の支援を行うことである2).ASTは専任の4職種で構成され,内1名は専従と規定されている.臨床微生物検査を担当する臨床検査技師は3年以上の病院勤務経験が必要となる.
AS加算が設定されるまでの経緯を表1に示す.耐性菌による感染症患者の増加に伴い,2050年に脅威的に同死亡者数が増加すると想定(オニールレポート)され3),世界保健機関がグローバルなAMR対策アクションプランを提唱した4).日本5)や他国もナショナルAMR対策アクションプランを公表し,その後日本では「抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス」2)や「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告2017」6)が報告された.ワンヘルス(図1)という考え方は人,動物(伴侶動物・食用動物・野生動物など),それを取り巻く環境(植物・土壌・河川など)を地球規模で包括し,維持していく健康管理を意味している7).注意すべきことは,人,動物,環境といった分野に対して薬剤や物質(抗菌薬・動物用抗菌性物質・植物用抗菌性物質など)が投与され,耐性菌が循環しているという点である.そして,AS加算や小児科診療でのかぜ症候群に対する抗菌薬不使用への加算である“小児AS加算”設定1)へと至った.
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