FOCUS
尿路結石の発症における遺伝因子と環境因子
海野 怜
1
,
安井 孝周
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科腎・泌尿器科学分野
pp.566-568
発行日 2016年7月1日
Published Date 2016/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206477
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はじめに
尿路結石の生涯罹患率は,食生活の欧米化に伴い上昇し,男性では100人中15人1)に達しており,形成機序の解明と再発予防法の確立は急務である.尿路結石は多因子疾患であり,さまざまな要因が重なって発症する.しかし,その成因は完全には解明されておらず,尿路結石を生活習慣病の一疾患と捉え,病態解明から予防法を講じる必要がある.
尿路結石の成分の90%以上をシュウ酸,カルシウムなどの無機物質が占め,これらが尿中で過飽和となることが結石の成因と考えられてきた.筆者らは,尿路結石の無機物質を対象としたこれまでの予防法に限界を感じ,結石中に数%含まれる有機物質と腎尿細管細胞の炎症に着目して研究を進めてきた.その結果,尿路結石の形成初期に酸化ストレスによる腎尿細管細胞傷害が生じ,有機物質(マトリックス)であるオステオポンチン(osteopontin:OPN)が発現したのち,結石形成に至る分子機序を解明した.本稿では,尿路結石の形成機序について,生活習慣病との関連,OPNの機能を中心に概説する.さらに,尿路結石の遺伝要因について,一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)の解析から将来の予防法への展開について記したい.
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