増刊号 血液形態アトラス
総論
1 WHO血液腫瘍分類と血液形態学
矢冨 裕
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.836-837
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206135
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造血器腫瘍は,造血幹細胞から派生する種々の分化段階の血液細胞の腫瘍であり,大きく白血病と悪性リンパ腫に大別される.その疾患分類は,造血器腫瘍の診療に携わるものの共通の土俵として,診断・治療の比較・標準化においてきわめて重要なものである.
わが国を含め,急性白血病,およびMDS(myelodysplastic syndrome)の臨床は血球形態の観察が中心とされる時代が長く続いた.なかでも,FAB(French-American-British)分類1)は形態学中心の分類であり,容易に活用できることから,その臨床的有用性は広く認められてきた.しかし,20世紀後半以降の分子生物学を含む生命科学の急速な進歩は,造血器腫瘍を中心とした血液疾患の診断にも大きな変化を与えた.フローサイトメトリーによる表面マーカーの検索や染色体分析,また遺伝子検査などにより異常細胞の性状・起源を明らかにすることで,形態学では得られない精緻かつ臨床的にも有用な情報を得ることができるようになったのである.その結果,最新の造血器腫瘍研究の成果を臨床にフィードバックさせることができる,病因に基づいた新しい白血病分類法,造血器腫瘍分類法が望まれるようになった.
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