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希少糖
何森 健
1
1香川大学
pp.4-7
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205762
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はじめに
希少糖(rare sugar)という言葉は“造語”である.2001年,国際希少糖学会で「自然界に存在量の少ない単糖とその誘導体」と定義された1).
現在,地球上の有機物のほぼ全てが生物によって作られている.希少糖は有機物である.生物は不要なものは作らない.したがって,希少糖は生物にとっては必要性がほとんどないため,その存在量が少ないといえる.
植物が,太陽の光エネルギーを糖という形で,化学エネルギーとして蓄積する.それを生物がエネルギーとして利用する.生物へエネルギーを運搬するのが,糖の重要な役割の一つである.希少糖は単糖であり,“糖”であるが量が少ない.したがって,糖の重要な役割であるエネルギーの輸送に利用されることはない.生物界での希少糖の存在意義については,まだ不明な点が多い.
本稿では,希少糖を人類が作って利用するという立場からの紹介となる.
図1は地球上に存在する単糖の量を模式的に表現した図である.圧倒的にD-グルコースが多い.小さな赤丸は,存在量の少ない希少糖を表している.希少糖の量は少ないが,種類は多い.
1800年代末までにFischerらの研究で,単糖の全ての構造が決定され,名前も確定した.炭素数4,5,6の単糖の総数は約50存在し,大部分が希少糖である.名前も構造も明らかであり,しかも利用価値が未知の希少糖を作る研究には,誰も興味を示さなかった.
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