技術講座 病理
ハンセル染色法—鼻・気管支・結膜分泌液の好酸球・好塩基球染色
斎藤 洋三
1
1東京医科歯科大学耳鼻咽喉科
pp.342-344
発行日 1984年4月1日
Published Date 1984/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205438
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アレルギー反応における好酸球・好塩基球の意義
好酸球増多は古くからアレルギー性疾患の指標となっている.その機序はいまでも不明な点が少なくないが,簡単に説明するといちおう次のようになる.
アレルギー性の鼻炎,気管支喘息,結膜炎などといった,いわゆるⅠ型(アナフィラキシー型)反応で起こる疾患では,発症抗体であるIgE抗体が組織中では肥満細胞(マスト細胞)に,血中や分泌物中では好塩基球のそれぞれ表面に固着しており,抗原と結合することによってこれらの細胞内顆粒からヒスタミン,SRS-A(ロイコトリエン)など種々の化学伝達物質が遊離されてアレルギー症状が発現する.しかし一方では,症状を結果的には抑えようとする化学伝達物質もあり,その一つに好酸球遊走因子(eosinophil chemotactic factor of anaphylaxis;ECF-A)がある.小分子のペプタイドとされているが,このECF-Aの作用によって,好酸球は血中→組織中→分泌物中へと動員される.そして細胞内顆粒にある種々の酵素(ヒスタミナーゼ,アリルサルファターゼなど)の働きなどによって,好酸球はアレルギー反応の火消しの役割を担っているといってよい.ECF-A以外にも,好酸球遊走因子にはリンパ球,補体,腫瘍,寄生虫,細菌などに由来する因子もあるが,臨床的に認められる分泌物中の好酸球増多は,IgE関与のアレルギーの存在を強く示唆するものといってよい.
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