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はじめに
微生物とは,いうまでもなくわれわれの肉眼では明瞭にまたはまったく識別できない微小な生物である.したがって,直径1mm以下のものは,おおまかにいって微生物の範疇に入る.
微生物に対するわれわれ人類の認識は,17世紀末のAntony von Leeuwenhoekによる顕微鏡の発明に始まる.微生物には原核生物として細菌,真核生物として真菌と原虫,およびそのいずれにも属さないウイルスが含まれる.微生物(microbes)という語は1878年,フランス軍医学校の外科学教授Sedillotがその当時のvegetaux cryptogames microscopiques,animalculos,infusoria,bacteries,monadsなどを一括して現在の意味で用いたのが始まりといわれる.しかし,1800年代半ばまでの微生物学者はMuellerやEhrenbergをはじめとして,現在の細菌を原生動物と同様に動物と考えており,VibrioやSpirillumは本来動物の属名として付けられたものである.1854年Ferdinand CohnはEhrenbergのVibrioniaと藻類の類似点に着目し,細菌が動物界ではなく植物界に属するという見解を初めて示し,VibrioやBacillusを細菌の属名として用いた.それ以来,細菌は下等な植物として扱われてきたが,1937年Chattonは細菌と藍藻をまとめて原核生物(procaryotes),その他を真核生物(eucaryotes)と名づけて生物を二分することを提唱した.1968年にMurrayは,細菌を原核生物として動物界および植物界から独立させた原核生物界の概念を発表した.この原核生物界にはウイルスは含まれない.
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