技術講座 生理
生体電気現象のとらえ方2—誘導電極を中心に
松尾 正之
1
1東北大学工学部電子工学
pp.356-360
発行日 1985年4月1日
Published Date 1985/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203319
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生体電気現象の誘導法の基本は,GalvaniやEinthovenの時代と本質的に異なるところがない.例えば図1の心電図誘導の例に示すように,その基本は生体に金属である誘導電極(生理学では導出電極という)を装着し,これを増幅器(または検流計)につなぐことにある.
計測しようとする生体電気現象は,特定の器官,例えば心臓などの発電電圧である.しかし,生体は組成がほぼ海水に等しい組織液で満たされており,これは電気の良導体である.したがって,体表上で計測される電圧は,導体内に埋もれた特定器官の発電電圧が,体表上に及ぼす電界を計測することになる.また,この電界は時間的に変化するベクトルであり,かつ導体内に埋もれた発電機の体表上に及ぼす電界は極めて微弱である.微弱な電界を計測するためには高感度の増幅器が必要となり,これは同時に商用電源(50Hzまたは60Hz)やラジオTVの電波による妨害を受けやすいことを意味する.一方,電界を計測することは,体表上にどのように誘導電極を配置するかが決定的な問題となり,これによって観測される生体電気現象の性質が定められる.これは医学的な面から検討されるべきことであるので,ここでは誘導電極を中心として,主として計測的な立場から考えてみよう.
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