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検疫所では,世界保健機関を通じて各国と検疫伝染病"コレラ,ペスト,痘そう,黄熱"や世界保健機関の監視下におかれている,インフルエンザ,回帰熱,急性灰白髄炎,発疹チフス,マラリアなどの伝染病の発生情報の収集,交換を行っており,国際的視野のもとに他国からの伝染病侵入を防止している.しかし,いまだ東南アジア地域などの発展途上国には,多くの伝染病が蔓延しており,航空機の発達によって短時間で汚染地を経由して我が国に入国する渡航者が増大している現在,感染後発病前の状態で入国しようとする者を完全に阻止することは不可能であると考える.なお,検疫を厳重に行わねばならないことは,自明の理であるが,その反面,海外交流及び通商貿易を阻害する恐れがあり,検疫を実施するに当たって極めて困難な状況にあると言える.
次に検疫とは,検疫伝染病が外国から来る船舶や航空機によって我が国に侵入することを未然に防ぎ,国民の健康な生活を守ることであるが,このほか,植物や動物については植物防疫所ならびに動物検疫所でそれぞれ別に検疫が行われている.検疫業務について簡単に述べると,外国から我が国に来る船舶や航空機に対し検疫伝染病の侵入を防止するため,海港,空港ごとに一定の区域を定めて,そこで検疫を行うほか,船舶や航空機の乗客及び乗組員に必要な予防接種を行ったり,船内や機内の衛生検査や消毒及び虫類やネズミ族の駆除を行っている.なお,港や飛行場及びその周辺の衛生状態などを把握するため,陸上の建物や施設などのネズミ族,虫類の調査のほかに,飲料水や海水などを定期的に検査し必要に応じてネズミ族と虫類の駆除,または港湾関係者の健康指導なども行っている.以上のほかに,海外旅行者に対する予防接種の実施ならびに国際予防接種証明書に認証印の押印も行っている.
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