病気のはなし
脳卒中
澤田 徹
1
1北里大内科
pp.242-248
発行日 1976年4月1日
Published Date 1976/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201025
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脳卒中とは
"脳卒中"という言葉は我が国でもかなり古くから使われているが,これを文字どおり解釈すると,"卒"は"にわかに"とか"突然に"という意味であり,"中"は"あたる"ということであるから,脳卒中とは"脳が突然何かにあたる"ということを意味する.一方,脳卒中のことを,"中気"とか"中風"ということもある.毒にあたったことを"中毒"と呼ぶように,これは悪い風つまり邪気や邪風にあたったという意味である.すなわち,昔の人は,それまで元気であったものが突然脳卒中発作で倒れるのをみて,"脳が悪い風にあたった"と考えたのであろう.英語でも脳卒中発作のことを"stroke"と呼ぶことがあるが,これも"あたる"とか"なぐり倒される"という意味を持つ.
この言葉の意味自体が示すように,脳卒中発作は極めて急激に発症するものをいうが,これは血管障害の大きな特徴の一つである.現在医学的には,"急激に生じた循環障害のため,意識障害,言語障害,片麻痺などの脳症状が突発した状態"を指して脳卒中という言葉が用いられている.従って,脳卒中とは,単独の疾患を意味するものではなく,種々の脳血管障害によって急激に発症した脳症状を広く総称した言葉である.
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