技術講座 細菌
嫌気性菌検査・1
小栗 豊子
1
1順大病院中検
pp.66-67
発行日 1974年9月1日
Published Date 1974/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200573
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細菌は酸素に対する態度の違いより,(1)偏性好気性菌,(2)通性嫌気性菌,(3)偏性嫌気性菌の3種に分けられる.(1)は増殖するためには酸素が不可欠である菌群(結核菌,炭疽菌,ジフテリア菌など),(3)はこれとは逆に酸素の存在下では発育できず,死滅しやすい菌群(破傷風菌,バクテロイデスなど),(2)は酸素の有無に無関係に増殖できる菌群(ブドウ球菌,大腸菌など)である.通常(1),(2)を含め単に好気性菌と呼び,(3)を嫌気性菌と呼ぶ.嫌気性菌は土壌,空中をはじめ,ヒト,動物の腸管内,口腔,生殖器,尿道粘膜などの常在菌叢として広く分布しているが,一方,菌血症,化膿性髄膜炎,化膿性腹膜炎など重症な感染症の原因菌としても重要である.現在ではこれらの嫌気性菌を患者材料より培養することは,日常細菌検査において必須とされている.
しかしながら嫌気性菌検査は好気性菌の検査に比べると,操作がやや複雑であり,また培養にも長時間を要するなど,めんどうな点が多い.そこで忙しい検査室ではたとえ嫌気性菌が検出される可能性のある材料でも,病原菌としての価値の乏しい材料については,嫌気性菌検査を行わないことを原則とする施設が多い.嫌気性菌を検査するか否かは多くの場合,その材料が常在菌の混人を避けて採取されたかどうかに基ついている.すなわち便,咽頭粘液,喀痰などは常在菌として嫌気性菌が多数検出されることから,実際に嫌気性菌を検出してみても,病原菌かどうかの意味づけは困難な場合が多い.
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