技術講座 細菌
滅菌と消毒・1
小栗 豊子
1
1順大病院中検
pp.64-65
発行日 1973年6月1日
Published Date 1973/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200176
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- 文献概要
微生物検査室(または研究室)では種々の微生物を取り扱っており,ここで働く人々は絶えず感染の危険にさらされている.また空中,机上などには種々の微生物が生存しており,これらが微生物検査の妨げになることも少なくない.滅菌と消毒とは,微生物検査に携わる人々が安全にかつ正確な実験成績を得るためにも,欠くことのできない操作である.
すなわち滅菌とは生存している微生物すべてを殺菌または除去して無菌の状態にすることで,滅菌された物件には生きた微生物が見いだされてはならない.一方消毒とは,病原微生物を殺すかまたは感染を起こすに至らない状態に弱めるための操作である.たとえば解剖器具などは一定時間沸騰水中で煮沸後使用するが,この場合には自然界に広く分布しており熱に対して抵抗性の強い枯草菌の芽胞は死滅しない可能性が強い.すなわちこの条件では黄色ブドウ球菌,チフス菌などは殺すことができても,一部の非病原菌は生存しているかもしれない.したがってこの操作は完全な殺菌を果たしえないので,消毒(煮沸消毒)法の一種であり滅菌法ではない.
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