臨床医からの質問に答える
輸血遡及調査の必要性について教えてください
紀野 修一
1
1日本赤十字社北海道ブロック血液センター
pp.876-880
発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104389
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遡及調査の背景
1951年,わが国で最初の民間血液銀行が開設された.当時は売血制度が認可されており,血液銀行が供給していた血液のほとんどは売血者由来のもので,その血液を輸血することで発症する輸血後肝炎が社会問題となっていた.1964年,駐日米国大使のライシャワー氏が暴漢に襲われ,手術時の輸血が原因で輸血後肝炎を発症したことを受け,時の池田内閣は売血制度の廃止と献血制度への移行を閣議決定した.売血時代の輸血後肝炎の発生率は約50%であったが,献血制度への移行によって,その発生率は約3分の1に減少した.1972年から輸血用血液のHBs(hepatitis B surface)抗原検査が行われるようになり,検査対象となる病原体の種類は徐々に増えていった.
現在は,全献血者の血液を対象に,梅毒,B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV),C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV),ヒト後天性免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV),ヒトT細胞白血病ウイルス,ヒトパルボウイルスについて血清学的スクリーニング検査が行われ,これらに加えて,HBV,HCV,HIVについては20人分の献血者検体をプールした核酸増幅検査(nucleic acid amplification test:NAT)が行われている(2014年8月1日から個々の献血者血液を対象にしたNATが開始される予定).これらの検査によって,輸血による感染症発生率は大幅に低下した(表1)1).
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