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はじめに
診療現場では,各種検体検査,画像診断,心電図など,反復して行われる検査の過去記録との比較が患者診療方針の決定のために必須である.しかし,それを行うためには各計測値の精度が担保されているという前提があり,検体検査であれば,X-R管理図を含む各種の精度管理図が作成され,放射線画像であればファントム撮影が精度保障のために行われている.しかしながら,現在の生理機能検査においては,この精度管理業務が当然であるという意識は薄いと言わざるを得ず,内部精度管理に関しては,機器精度・手技精度とも公開情報は非常に少ないのが現状である.
心電図についていえば,アナログ心電計が多用されていた頃は,校正波記録とともに,模擬波形発生装置による心電図波形を用いた検討報告が散見されたが1~3),詳細な検討報告は近年では認められない.現行で使用されている心電計は,ほとんどデジタル化されており,それだけ信頼度が高いとも考えられるが,実診療での精度担保の努力が払われなくてよいわけがない.
一方,心電図は特に即時性を要求される検査である.このため,心電図の結果保存・ファイリング・データベース化に関しては,診療録の電子化に先立って取り組みが行われてきたケースが多く,複数の医療機関から心電図検査ファイリングシステムの導入経験,運用状況,コスト削減効果についての報告がなされている4~7).しかしながら,運用実績が多い割には,臨床側からみたシステムの実臨床への有用性や,システムを用いた精度管理業務の報告はみられない.病院検査部門の標準化・認定には,国際規格としてISO 15189が徐々に普及しつつあるが,同規格の2012年版では,生理機能検査,特に心電図が含まれると記載された.今後,検査室の認定・認証において,心電図検査の精度管理・標準化は必須の業務となる可能性がある.
そこで筆者らは,生理機能検査として最も一般的な心電図検査について,2010年から長期間にわたる機器精度管理業務の実働を試みた.本稿では,帝京大学医学部附属病院での運用状況を概説し,また,精度管理業務の現状を述べる.
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