Laboratory Practice 〈生理〉
J波症候群の心電図波形
阿部 敦子
1
,
池田 隆徳
1
1東邦大学医学部内科学講座循環器内科学分野
pp.602-605
発行日 2013年7月1日
Published Date 2013/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103981
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はじめに
J波(早期再分極)症候群とは,12誘導心電図上のQRS終末部にみられるノッチまたはスラーを有する症候群で,特発性心室細動による心臓突然死との関連がある1,2).
以前,J波はオズボーン波と呼ばれており,低体温時や脳出血などの際に記録されることが知られていた.2008年の報告では,J波はBrugada症候群以外の特発性心室細動患者(器質的心疾患を有しない)における心電図上,約30%と高率に認められ2),J波症候群として独立した疾患概念として報告され,以来,注目を浴びている.
特発性心室細動のうち,Brugada症候群では右側胸部誘導に特徴的なCoved型を,J波(早期再分極)症候群では下壁または左側壁誘導においてJ波を認め,心電学的特徴は異なる.しかしその両者には,その波形が日内・日差で自然変動し,心室細動の出現には自律神経活動(特に迷走神経活動)が大きく影響しているなど類似点も多い3).
一方,J波は健常正常者にも2~5%で認められ,その存在のみで発性心室細動による心臓突然死が起こるとは考えにくい.日常の臨床の現場では,検診の心電図でもしばしば遭遇することがある.J波の出現率として,特発性心室細動以外で高く認められるのは若年アスリートが知られている.
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