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読者の皆様,明けましておめでとうございます.昨年は,東日本大震災と大津波,福島第一原子力発電所の被災事故,タイの洪水,ギリシャから始まった世界経済の危機など,わが国の内外で大きな災いが生じた年でした.特に被災地の方々はこれまで大変な思いをされてこられたと思います.今年は少しでも良い年であってほしいと願っております.
私の専門領域である感染症の世界では20世紀の終わり頃から大きな変化が生じています.最近は新型インフルエンザの世界的流行を経験しました.新型インフルエンザの流行によってAソ連型H1N1株が世界から消えてしまったのは興味深い現象でした.またグラム陰性桿菌を中心とした新しい抗菌薬耐性菌の流行が世界各国から報告されています.アジアでもインド,中国,韓国などではわが国よりも耐性菌が著しく多く検出されており,「耐性菌は先進国に多い」という既成概念は過去のものになっています.特にインドでは衛生状態が悪いため,新しい耐性菌が急速に地域に拡大し,コントロールが不可能になっています.これに対してわが国は新しい耐性菌の分離が世界で例外的に少ないのですが,これはわが国の抗菌薬の使用法や院内感染対策がうまく機能している成果だと思います.この状況が少しでも長く続くことを願っています.しかし,「日本は耐性菌が少ない」という現状を認めようとしない一部の“ジャーナリスト”が,わが国よりもはるかに耐性菌が多い米国の抗菌薬の使用法をわが国に普及させようとしています.これはわが国にとって大変危険な策謀です.わが国の抗菌薬療法に関して医療従事者はもっと自信をもっていただきたいと思います.なお,わが国ではマイコプラズマ肺炎や百日咳など古典的な疾患の患者の増加が最近報告されており,その原因究明が待たれます.本年がわが国の医療にとって実り多き年になることを期待します.
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