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免疫反応を用いた腎機能検査
伊藤 喜久
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1旭川医科大学臨床医学検査講座
pp.824
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102949
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- 文献概要
健常人では,おおむね分子量5万以下の血清蛋白が腎糸球体基底膜を通過し近位尿細管で再吸収分解されて,ごくわずかしか尿中に排泄されない.見方を変えると,GFRの低下により分子量5万くらいの蛋白から徐々に血清濃度が上昇し始める.急性相反応物質(α1-アンチトリプシンなど)に属さず他の成分と複合体を形成(IL-6,PSA)しない腎前性の変動の少ない単独成分,例えば酵素ではアミラーゼ(分子量5万),蛋白ではペプシノーゲンI(4万),α1-ミクログロブリン(3万)などでは,シスタチンC上昇に先行してGFR70~90ml/分あたりからの低下を見て取れる.
一方尿ではアルブミン,α1-ミクログロブリンの同時測定により糸球体,尿細管機能の低下を相乗的に病態解析できる.抗癌剤,抗菌薬の使用による急性腎不全,慢性進行性に腎機能低下をきたす病因病態は腎尿細管,間質が主体的にかかわっており,もっと尿細管機能に注意が向けられてもよい.病態生理を踏まえて,自由な発想で既存の項目の検査値を見直してはいかがだろうか.
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