増刊号 免疫反応と臨床検査2010
I 総論―免疫反応の基礎
F 抗体の作製と臨床検査への応用
抗体の作製と臨床検査への応用
多田 伸彦
1
1東海大学医学部病態診断系病理学部門
pp.806-809
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102897
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はじめに
さまざまな臨床検査において抗体が用いられている.抗体の最大の特徴は,その特異性にある.抗原と特異的に結合する抗体があれば,抗原の局在の証明,抗原の定性・定量が可能となる.過去数10年にわたり,さまざまな抗体の作製が試みられてきた.そして同時に,CD抗原をはじめとして数多くの未知の抗原(物質)が発見されてきたが,この“抗原の発見”は実際には“抗体の作製,抗体の発見”であった.あるいはこれまで検出できなかった抗原を確実に検出,そして定量する必要性にも迫られ,多くの抗体が作製されてきた.一方では作製された抗体の“特異性”が重要な問題となってくるのである.この特異性とは,抗体が結合する物質(抗原)は,本当に目的とする物質とだけ結合しているのかという問題である.用いている抗体が目的とする抗原以外の物質とも結合すると,検査結果の信頼性は著しく低下してしまうであろう.
抗体にはさまざまな種類のものがあり,商品化されている抗体が10cmもの厚さのカタログとなって研究室・仕事場に置かれているのは周知の事実であろう.また,多くの抗体は国内のみならず外国の企業から発売されており,説明書は英文で書かれていることも多い.また,同じ特異性をもつ抗体でも,使用目的によって異なる製品として販売されている.さらに,使いたいと思う抗体を見つけても,カタログには実に多くの製品が並んでおり,どれを使えばよいのか迷った経験があることも多いと思われる.
本稿では,抗体の基本的な作製方法および種類を免疫生物学的な見地から解説することにより,臨床検査への応用が理解できるようになることを目的とする.
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