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はじめに
不明熱の患者を目の前にして,今後原因疾患を検索していかねばならないという場面では,まず感染症,悪性腫瘍,膠原病という3領域を念頭に置くのが臨床医にとって鉄則である.成人Still病は膠原病のうちでも知名度はあまり高くない疾患であるが,不明熱の鑑別において重要であり,現在でも成人において不明熱の原因疾患の5~10%を占めるとされる.
この疾患名の由来は,19世紀末にさかのぼる.元来は小児で提唱されたStill病が,成人にも拡大適用されるようになったことから成人Still病と名付けられた経緯がある.具体的には,1897年に英国のGeorge F Stillが,発熱,リンパ節腫脹,肝脾腫などの全身症状を伴う慢性関節炎の小児12例の臨床像を検討し,成人でみられる関節リウマチ(rheumatoid arthritis,RA)とは異なる病型と報告したのが最初である.この病型はStill病と呼ばれ,長い間小児に独特と考えられていたが,1971年に英国のBywatersが,成人を対象とした観察で,RAのcriteriaを満たさないが,Stillが記載した臨床像によく似た病像をもつ14例を報告し,成人Still病(adult Still's disease)の概念を提唱した.現在,呼称としては成人Still(日本語表記ではスチルあるいはスティル)病(adult Still's disease)あるいは成人発症Still病(adult-onset Still's disease)の両方が用いられる.最近は小児科領域ではStill病の名称はあまり使われず,“若年性特発性関節炎の全身型”と称される.
好発年齢は30歳代までの若年成人であるが,高齢発症の報告も増えてきている.わが国での有病率は10年前の調査で10万人当たり男性で0.73人,女性では1.47人と報告されており,女性のほうが2倍多い.
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