一般検査室から私の一枚
ある沈渣像
油野 友二
1
1金沢赤十字病院検査部
pp.546
発行日 2007年6月1日
Published Date 2007/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101745
- 有料閲覧
- 文献概要
なんだ円柱じゃない?と思われるかもしれません.でもそう思っていただけると嬉しいです.実はこれは材料が尿ではなくて腎臓の割面を生食水で洗ったときの,その生食水の沈渣像です.20年ほど前,病理解剖中に腎臓の写真を撮るときに洗浄した液をビーカーに取っておいて,後で覗いてみたんです.なぜかって!覚えていません.多分,ただ見たかったからでしょう.よく見ると細胞がホースの管ように並んで,まさに尿細管では…….そのなかに赤血球が詰まっています.赤血球円柱はこうやってできるんだとドキドキした記憶があります.少し落ちついてからよく見ると管の左上の細胞,脂肪変性しているように見えませんか?「卵円形脂肪体だ!」とさらに顔は紅潮してきました.こんな私の姿,傍から見れば異常ですよね.
尿沈渣情報から伝えるべき病態情報はたくさんあるはずですが,どうも曖昧な情報が多いのが現状です.日常業務からちょっと離れて何かやってみると,思わぬ発見が!そんな貴方を尿中のみんなが今や遅しと待っているような気がします.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.