増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論
6.遺伝子検査
1 bcr-abl mRNA
上平 憲
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・制御学講座
pp.1312-1314
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101121
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はじめに
bcr-abl融合遺伝子は,Nowellら(1962年)1)によって慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia,CML)にPh1染色体として発見された染色体異常に始まる.当初,21番の長腕の欠損とされていたが,その後,9番と22番染色体の長腕の相互転座,t(9;22)(q34;q11)であることが明らかにされた2).分子生物学的には,9番染色体上の癌原遺伝子c-ablが22番染色体の限られた切断部位(bcr)の近傍に転座し,後天的に新たにつくり出された融合遺伝子である.
c-ablはproto-oncogeneで,正常細胞では145kDaの蛋白を少量産生しているのみでin vitroではほとんどチロシン活性を示さないとされている.しかし,bcrと融合したbcr-abl融合蛋白は,強力な非受容体型チロシンキナーゼ活性を有しており,Ras・PI3キナーゼ・Stat5の細胞内シグナル伝達経路を介して細胞周期を「正」に制御してCML細胞などの増殖に関与する.
また,bcrの主要な切断部位は,Major(M)-bcr,minor(m)-bcr,μ-bcrの3か所に集中しており,各々M-bcrはCML,m-bcrは急性リンパ性白血病(acute lympho-blastic leukemia,ALL), μ-bcrは好中球性白血病(CNL)に特異的である.
したがって,本融合遺伝子は,Ph陽性白血病の診断と切断部位の差による病型診断,Imatinibの適応や管理,治療後の緩解の深さ(分子緩解)および腫瘍量(MRD)のモイニターとしての重要な分子バイオマーカーである.
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