増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論
5.感染症検査
14 黄色ブドウ球菌ペニシリン結合蛋白 2′(PBP2′)
保科 定頼
1
1東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座
pp.1287-1288
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101113
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はじめに
黄色ブドウ球菌〔Staphylococcus (S.) aureus〕は,グラム陽性球菌で細胞膜の外側にペプチドグリカン網目構造を有する.細胞壁は,立体構造を持ち細胞質で合成されたグルコサミンとムラミンはそれぞれ糖転移酵素と架橋酵素によってペンタペプチド末端のD-Alaが切り離されペンタグリシンとの架橋が成立する.テトラペプチド末端にD-Alaが結合した,D-Ala-D-Alaの構造はカビが作るβラクタム環と類似しているため,ブドウ球菌の架橋酵素はβラクタム環と結合し,細胞壁合成が阻害されてしまう.それで,架橋酵素をペニシリン結合蛋白質とも呼ぶ.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-Resistant S. aureus,MRSA)は1960年に英国で発見されて,S. aureusが本来有する架橋酵素PBP1~PBP4以外にPBP2′(PBP2a,78kDa)をもち,メチシリン耐性のメカニズムは説明される(Y. Utsui,T. Yokota,1985).mecAの転写因子としてペニシリナーゼプラスミド上bla1が産生する蛋白質(blaR1)があり,PBP2′発現量が規定されている.bla1の発現調節は広域にβラクタム抗生剤が信号伝達を介して行っていると推定される.その結果,PBP2′を誘導発現しているものと考えられる.近年,黄色ブドウ球菌の全ゲノムが解読された.
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