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【問題1】 解答:(3)伝染性単核球症
検査所見から血液検査では貧血,血小板減少は認められず白血球がやや増加している.生化学検査では肝機能異常がみられる.白血球分類で出題の図1,2にみられる細胞を「other」としているが,これらの細胞の同定がポイントとなる.図1では細胞径25μmと大型で一見単球様を呈しているが,平坦なクロマチン構造に不規則な凝集が見られる.細胞質は若干の好塩基性がうかがえるが全体的には透明感がありリンパ球の特徴を有している.図2では細胞径18μmとこちらも大型で,不規則なクロマチン結節と細胞質の好塩基性が強いリンパ球系の細胞である.図1,2とも正常なリンパ球と比較すると大型で好塩基性が強い.このような細胞は異型リンパ球と同定される.異型リンパ球とは生体が何らかの刺激により正常リンパ球が活性化され,細胞の大型化,好塩基性の増強,著明な核小体などの形態変化が起こった反応性のリンパ球を指し,リンパ系腫瘍に出現する腫瘍性の異常リンパ球様細胞と区別される.異型リンパ球の出現パターンはさまざまな形態をしたリンパ球が多彩的に出現するのが特徴である.一方,腫瘍性の異常リンパ球様細胞は単調的に出現するのが一般的である.
本症例は発熱,咽頭痛,頸部リンパ節腫脹,肝機能異常,異型リンパ球の出現から伝染性単核球症と診断された.伝染性単核球症とはEBウイルス(Epstein-Barr virus)の感染によって起こる良性の急性疾患で主に小児から青年期までに発症するがほとんどが小児期の不顕性感染である.病態としてはEBウイルスがBリンパ球に選択的に感染し,それにTリンパ球が反応しcytotoxic Tリンパ球が増殖し(これが異型リンパ球としてみられる),引き続きmemory Tリンパ球となって感染Bリンパ球の増殖を抑制する.よって確定診断にはEBウイルス抗体価の測定が必須で,これにより感染期が推定できる.感染初期にはIgM抗体が産生され,次いでIgG抗体が急性期に産生される.回復期になるとIgM抗体が下がりIgG抗体は持続する.
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