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はじめに
日常の内科診療,特に消化器病診療においてウイルス性肝炎はよく目にする疾患である.肝炎ウイルスではA型,B型,C型肝炎ウイルス感染(hepatitis A virus,HAV;HBV;HCV)がわが国では多い.さらに最近ではこれまで輸入感染症とされてきたE型肝炎ウイルス(hepatitis E virus,HEV)のわが国固有株の存在も明らかになり,しかも鹿,猪,豚といった食品の生肉の摂取から感染するとの報告もあり,その対応が急務となっている.
肝炎ウイルスが感染しているか否かは患者血清中のウイルス抗原,抗体の検索によって行われる.HBVのように血中ウイルス抗原量の多いウイルスは直接,逆転受身赤血球凝集法(reversed passive hemagglutination,RPHA法)や化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay,CLEIA法)でHBs(s=surface,表面),HBe(e=early,初期)抗原を検出できる.また,ウイルス抗原量の少ないHCVでもコア抗原は定量可能である.しかし,ウイルス量の定量を行う場合はウイルス核酸をPCR(polymerase chain reaction,ポリメラーゼ連鎖反応),RT-PCR(reverse transcriptase-PCR,逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)法で増幅して行う方法がとられている.C型慢性肝炎のインターフェロン療法の適応においては,最近になってペグ化インターフェロン,リバビリン併用療法が保険収載され,これまで治療抵抗性とされていたジェノタイプ1b型,高ウイルス量群でも50~60%のSVR(sustained virological response,持続的ウイルス陰性化)率が得られると報告された.そのため最近では高ウイルス量域のHCV RNA定量を可能にするハイレンジ法が導入されている.一方,B型慢性肝炎においては抗ウイルス療法としてラミブジンが使われているが,ラミブジンはHBV ccc(covalently closed circular,閉環状)DNAからできるpregenome RNAが逆転写酵素によってpregenome DNAを合成する過程を阻害する.そのためラミブジンは肝細胞内のcccDNAを直接除去することはできず,血中のHBV DNAが長期に検出されなくなっても肝組織内にHBV cccDNAが存在する可能性がある.そのため肝組織中のHBV cccDNAがB型慢性肝炎におけるラミブジン療法の治療終了のマーカーとなる可能性がある.
本稿では肝炎ウイルスマーカーの中で,最近注目されているHCV RNA定量(ハイレンジ法)とHBV cccDNA定量,さらにHEV RNA定性法について解説する.
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