技術解説
臨床検査室における寄生虫卵検査法
辻 守康
1
TSUJI MORIYASU
1
1千葉大学医学部寄生虫学教室(虎の門病院一般検査室)
pp.617-622
発行日 1964年8月15日
Published Date 1964/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916797
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はじめに
近年わが国においては寄生虫性疾患が少なくなったといわれており,その検査法に関しても直接塗抹法1枚のみにて片付けられている傾向がないでもない。普通寄生虫といえばまず回虫が思い出され,これに起因する回虫症は"回虫零作戦"などの対策もあって確かに昭和22〜23年ごろよりは著明に減少しており,特に都会地の病院などでは本症を主訴として訪れる人はほとんどなく,他種疾患の臨床検査の際,付随的に本種虫卵が検出されるに過ぎない。
しかし一方では,免疫血清学的診断法の発達に伴い,日本住血吸虫症,肺吸虫症,肝吸虫症などの各種吸虫性疾患の疫学的調査が広くなされ,これらの患者が相当数に存在することも判明している。これら吸虫は貝類,魚類,カニ類などの中間宿主を必要とするので,比較的地方病的に患者が存在するのであるが,交通の発達せる現在ではその他の地域でもこれら吸虫症患者が皆無であるとはいい難く,その上これら疾病は回虫,鉤虫など腸管寄生のものと異なり,constantに糞便内排卵があるとは限らず,相当念入りに検査を実施しなければ看過されがちであり,従ってそれぞれの虫に適応した検査法採択の必要があると思われる。事実,虎の門病院でも昭和36年11月より吸虫類虫卵の検出にすぐれているといわれるAMSⅢ法を採り入れたところ,表1にみられるごとく,従来1例も検出されなかった横川吸虫,肝吸虫などの虫卵が見出されるようになり,検出率自体も若干高くなっている。
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