特集 血液検査の問題点
23 健康人の選び方と血液学的成分の正常値設定
大場 康寛
1
,
井田 憲明
2
,
佐々木 匡秀
3
,
柴田 進
4
1東洋工業病院臨床病理研究検査科部
2東洋工業病院臨床病理研究小児科部
3川崎病院臨床病理部科
4山口大・第3内科
pp.1008-1014
発行日 1968年12月1日
Published Date 1968/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916562
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はじめに
数値によって表現される臨床検査成績を基にして,病態を把握しようとする場合には,まず,その測定値が正常域にあるか,異常値域にあるかを判定するために1つの尺度,すなわち"正常値"に照らし合わせてみる必要がある。
通常,"正常値"と称しているのは,健康人集団を対象にして,その測定値の大部分がおさまる変動範囲をさすのであって,各個人の標準値(健康時の生理的変動範囲)ではないから,厳密にいえば,常に特定個人の病態判定の尺度となりうるとは限らないともいえるのである。したがって,理想的には集団の正常値とともに,各個人の正常値が求められていることが望まれる。しかし,実際には人種・性・年齢・季節・生活環境などの多くの因子によって規定される,特定個人のあらゆる生体成分の標準値を検索しつくすことは不可能であるから,健康人集団より設定される"正常値"を病態判定の基準として通常用いるのである。
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