Ex Laboratorio Clinico・26
高分子GOT
中島 正男
1
1虎の門病院消化器科
pp.160-165
発行日 1979年2月15日
Published Date 1979/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542915020
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はじめに
血清酵素の異常を手掛がりとして疾患の鑑別診断や経過観察を行うことは,もう長い間日常的な手段となっている.通常血清酵素が異常値を示す場合は,その酵素の由来する臓器疾患を幾つか考え,更に他の種々の酵素との関係から病気の本態が究明されていく.ところが近年になって血清酵素が異常値を示すにもかかわらず,関連のある臓器に何らの疾患も認められない症例のあることが分かってきた.
特に1964年Wildingらがglobulin bound amylaseについて報告して以来,血清中で酵素と免疫グロブリンが複合体を作り,血中酵素が異常値を示すことが広く知られるようになった.その後乳酸脱水素酵素(LDH),アルカリホスファターゼ(ALP),GPTの諸酵素についても同様の現象がみられる症例が次々と報告された.この種の血中酵素異常が起こる原因については酵素そのものの異常なのか,それともある種の疾患,例えば免疫異常の結果起こってくるものなのか現在までのところ明らかにされていない.しかし日常の医療業務に当たっては,常にこのような型の血中酵素異常があることを念頭に置いていなければならない.
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