技術解説
抗血清の作り方
臼井 美津子
1
,
菅野 恒博
1
,
松橋 直
1
1東京大学医科学研究所アレルギー学研究部
pp.703-712
発行日 1978年7月15日
Published Date 1978/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914800
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ある抗原を注射された動物は,生体防御の一環として種々の免疫反応をもって応答する.投与された抗原に対して特異的な抗体を産生するのもその一つである.そして私どもは,動物が産生してくれた抗体を利用して,種々の物質の検出,同定及び定量を行い,あるいは特定の細胞を殺したり機能を抑えたりして免疫応答の基礎を探っている.これらの実験において最も重要なことは抗血清の特異性であって,どのようにして特異性の高い抗体を動物に作らせるかという点が,抗血清作りの課題である.
抗原による刺激から抗体を産生するに至るまでには,種々の細胞,細胞からの液性因子などの関与する複雑な反応が行われるが,それらの機序は生体というblack boxの中に秘められていて,その全容は明らかにされていない.投与する抗原の量,性状,形態,投与の経路,回数,採血までの期間等々,種々の因子により結果はかなり影響されているはずである.しかしこれらに関する知見が乏しいので,特にウサギ,ヤギなどの中動物では系統的な基礎実験を行うことの困難さもあって,この条件で行うのが最も良いと確信を持てるようにはなっていない.多くの先人たちの経験の集積のうえに抗原を注射し,採血をしている現状である.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.