編集者への手紙
生化学系検査技師より見た血液学
三井 悦三
1
1阪南中央病院検査科
pp.1004-1005
発行日 1977年9月15日
Published Date 1977/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542914480
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最近の血液学における発展は目覚ましいものがあり,以前は生物学的にしか分からなかったことがどんどん化学的に解明されつつある.血液学の本を見ていると,生化学系技師にとって血液学が大変身近に思われるので,その感じたことを書いてみたい.なお血液学の分野では赤血球に関する事柄がいちばん身近に思われるので,ここでは赤血球を例として書いてみたい.
成熟した赤血球は核を持たない細胞でありながら約120日も生存するのであるが,どうしてそんなに長く生きられるのかということを知ろうとすると,どうしても生化学的知識が必要になる.すなわち,解糖系により得られるATP及びNADH,五炭糖リン酸回路により得られるNADPH,そして還元グルタチオン,以上四つの重要な化合物の関与する反応系路を最低限知っておく必要がある1).そうすると例えば,G-6-PDH欠乏症のときの溶血機構や,メトHb血症(中毒性,遺伝性)のときの酸素供給不足の機構が理解できるわけである2〜4).赤血球中の解糖系酵素異常が最近になって目につくようになってきたが,これらの酵素活性測定を行うためには,化学系技師と同じくらいに反応理論と測定技術が必要になってくると思う.今後赤血球,白血球あるいは血小板中のどんな物質が測定されるようになるか分からないが,酵素に関する知識はどうしても必要になると思う.
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