わだい
危険な好塩性ビブリオVibro damsela
余 明順
1
1大阪大学微生物病研究所
pp.1265
発行日 1986年11月1日
Published Date 1986/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913134
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V. damselaは70年代にすでに人の創傷感染部位から分離されていたが,"an unnamed marine vibrio"として扱われていた.Love1)らは,この菌が自然界でdamselfishに皮膚潰瘍を起こすことを見いだし,Vibrio damselaと命名した.今までに人の手や足の創傷部位から分離されたV. damselaはすでに12株CDC(Centers for Disease Control)に集められているが,いずれも重症ではなかった.
しかし最近の報告2,3)によると,テキサスの湾岸で魚釣りをしていた38歳の男性が魚のひれで軽い怪我をし,そのときはほんの少し痛みを感じただけであったのに,それから36時間後には重症の進行性壊死のため右腕を切断した.この患者には基礎疾患はなく,手術で得られた指の組織からV. damselaが分離された.また61歳の男性で,アルコール好きで膵炎とインスリン依存性糖尿病の病歴を持つ患者の場合,淡水湖で釣った魚を洗っていて魚で左手に浅い怪我をし,数時間後には左手が膨れて浮腫になり黒ずんできた.肘まで黒ずんできて指先が壊死を起こし,肩の関節離開を行った.しかし数時間後には切開部の周囲が壊死を起こしたので,さらに広範囲にわたる挫滅組織除去手術を行ったが,その後もDICが続き,急性の肝機能不全,過カルシウム血症を引き起こし,最初の怪我から9日目で死亡した.
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