Senior Course 血清
—血清検査の基礎—梅毒の血清学
浅川 英男
1
1東京医歯大・中検
pp.1548-1549
発行日 1976年12月15日
Published Date 1976/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909647
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梅毒罹患の有無の診断法は臨床所見と患者血清中におけるカルジオライピン(CL),およびTreponemapallidum (TP)の菌体成分そのものに対する抗体の検索による.CLによる血清反応の歴史は古い.しかしCLそのものは動物の臓器ばかりではなく植物や細菌中にも存在し,もちろんヒトの組織中にも似たものが存在している.またウシの心臓から抽出したリン脂質という意味でCLと呼ばれるが,抗原としてはこれにレシチンを加えた場合,その抗原性はいっそう強くなる(CL-Lec).TPに感染したものにCLに対する抗体が出現し,それによって梅毒感染と言い切ることができる(ある症例を除く)のは抗原,抗体二つの側から考慮が必要であろう.第一には,先に述べたようにCLそのものが,TPにも存在しうるということ.抗原構造がTPに存在するものとCLとが似ているということである.第二には,TPの感染によってヒトの体成分が破壊されて,ヒトの組織中にあるCLに似たものが修飾されて流血中に出現する.第三には,自己と非自己の識別能の不備な状況から,自己の体組織中のCLに対して容易に抗体を作りうるなどである.したがって第三の場合はある症例を除くことを意味し,その症例はSLEに代表される疾患であり,梅毒の血清反応の側からみると生物学的偽陽性ということになる.
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