特集 臨床検査室マニュアル
Ⅴ.検査データからみた疾患の特徴
慢性肝炎,肝硬変
上野 幸久
1
,
遠藤 了一
2
1三宿病院
2三宿病院研究検査課
pp.1254-1255
発行日 1976年11月1日
Published Date 1976/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542909555
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1.概念
急性肝炎の経過が遷延し,形態学的ならびに機能的異常が6か月以上(学者によっては1年以上)持続して,しかもまだ肝硬変にはなっていない状態を慢性肝炎という.急性肝炎のときとは異なり,肝細胞障害は急性再燃のときを除き一般に軽度となり,間質の反応,つまり炎症および線維化が主な病変である.原因は主として肝炎ウイルスであり,つまり慢性ウイルス肝炎が,我が国の慢性肝炎のほとんどを占めている.しかし,まれに薬物性あるいは自己免疫的機序によるもの(ルポイド肝炎と呼ばれる)の存在も知られている.
慢性肝炎は比較的軽い肝実質の障害と再生修復とを繰り返しながらも,一応肝小葉構造はほぼ正常の構造を保った状態である.これに対し肝硬変はかなり強い肝実質障害が反復した結果,肝小葉が原形に復することができず,正常とは著しく異なった構造に改築されてしまった状態である.線維化も高度になり,輪状に再生した肝実質を厚い線維が取り囲んでいるのが特徴的で,肉眼的にも,慢性肝炎がおおむね平滑であるのに対し,肝硬変では大小の結節状隆起を認め,硬度が著しく増加している,肝硬変は慢性肝炎から進行したものが多く,原因は我が国ではやはりウイルス性のものが大半を占めているものの,アルコール性のものもかなり増加している.ヘモクロマトージス,ウイルソン病,原発性胆汁性肝硬変などの特殊な肝硬変は一応ここでは除外したい.
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