総説
造血幹細胞
平嶋 邦猛
1
1放射線医学総合研究所障害臨床研究部
pp.389-395
発行日 1974年4月15日
Published Date 1974/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908499
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造血幹細胞とは
われわれが日常診療活動で観察するギムザ染色骨髄塗抹標本では,各血球系の種々の成熟段階の細胞が混在し,あたかもひとつの人間社会を鳥瞰するような感にうたれる.しかも,これらの細胞の形状・分布が,疾病の存在によって種々の修飾をうける様相は,生命活動の神秘を感じさせるのである.しかし,これらの複雑な細胞の集まりも,整理して観察してゆくと,造血細胞は,赤血球系,白血球系,血小板系の3系統に分類され,また細胞質,核の変化,細胞の大きさなどを基本として,未熟な段階から成熟したものに至るまでを,形態学的に分類することが可能となるのである.各血球系で,われわれが形態から識別可能な,最も未熟な段階の細胞は,赤血球系では前赤芽球,白血球系では骨髄芽球,血小板系では巨核芽球である5).しかし,ここで考慮にいれなければならないのは,塗抹標本で観察する状態は生体の造血活動の瞬間停止像であるということである.末梢血液中の赤血球は120日,白血球は6〜20時間,血小板は5〜10日間で崩壊し,それぞれ骨髄中の芽球の成熟によって補われている11).前赤芽球,骨髄芽球から成熟血球になるまでは,数日間のうちに数回の分裂を重ねるのである9).人体は,赤血球を考えても,1日に2×1011個の赤血球を新生しており,そのためには,1010の桁の前赤芽球が新生される必要がある.
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