検査室の常用機器・6
1.上皿直示天秤
木下 俊夫
1
1昭和大薬学部薬品分析化学
pp.1558-1560
発行日 1972年12月15日
Published Date 1972/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907884
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天秤はすでにBC4000年ころからメソポタミアで使用されていたといわれる.近代化学の進歩に伴って天秤の性能も向上し,19世紀には現在のものに劣らない感度のものが作られるに至ったが,2つの皿に試料と分銅を別々にのせて秤量する点では,古代の天秤と変わりがなかった.この両皿方式では支点から皿までの距離をまったく等しく作ることが不可能であるうえ,荷重が異なると感度も変わるという欠点があったので,同じく19世紀に置換秤量法の考えが提出された.これは天秤に常に最大荷重をかけておいて,試料をのせたらそれと等しい質量の分銅を取り除くという方法で,1945年にはこの考えをもとにしてMettlerが直示式の定感量天秤を実用化した.この方式では感度が一定であるから棹の傾ぎは試料の端数質量に比例しているので,この傾きを光学的に目盛りとして投影し,直接読み取って質量を知ることができる.この利点に加えて直示天秤は分銅を外部から加除できる装置や,目盛りを早く静止させるためのエアーダンパー装置がついており,従来の両皿式の天秤に比べてはるかに迅速,簡便に秤量が行なえる.現在化学実験室,試験室の天秤はほとんど直示式に置き換えられようとしている.
上皿直示天秤は,この直示天秤の迅速性と上皿天秤の便利さとを組み合わせたものである.臨床検査室での秤量には,迅速さと同時に読み誤りなどのまちがいのないことが特に要求されるが,上皿直示天秤の取り扱いやすさと質量の読み取りの確実さとはこの要求に答えるものといえよう,本稿ではこの上皿直示天秤の機能とその特徴につき,簡単に述べてみたい.
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