論壇
検査技師と倫理
柴田 進
1
1山口大・内科
pp.899-901
発行日 1970年9月15日
Published Date 1970/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542906906
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衛生検査技師と私
検査技師と倫理——正直にいってこのような題目をかかげて,衛生検査技師に語りかける資格のある人は少ないだろう.現在衛生検査技師が自分の職業が十分世間に認められていないこと(たとえば医科大学,歯科大学,薬科大学,農科大学の獣医科の卒業者は,望めば自動的に衛生検査技師の免状が下付されることになっている事実は,臨床検査の専門教育をほどこす学校を卒業し,むずかしい国家試験に合格することによりはじめて衛生検査技師の身分を与えられた人々から見れば,果たして自分の職業を医療における重要な部門として,正当に認識しているかと当局に反問したくなるだろう),その報酬が激しい労働にふさわしくないほど低いこと(この点では,とかく病院内で働いている事務職員の給料に対する均衡を云々し,衛生検査技師の仕事が本質的には医師と同じ性格のものであることが理解されていない)を不平に思い,他面では,自分の技術が時勢に遅れず日々伸長しつつあることを意識せずには働いていけない,悩ましい気持で煩悶していることを私はよく知っている.
これを承知のうえで倫理を云々するのは一見残酷なしうちではあるまいか.もしそれをなしうる資格が多少でも私にあるとすれば,それは私が数十年にわたって臨床検査室で衛生検査技師と一緒に働きつづけ,衛生検査技師と悩みを分かちあう医師であったということであろう.
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