技術解説
ビオテスト,レディ・ディスクによる細菌の生化学的性状検査—その理論と実際
坂崎 利一
1
1国立予防衛生研究所
pp.765-770
発行日 1961年12月15日
Published Date 1961/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542905907
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菌の生化学的性状検査の簡易化がもっとも強く要望されたのは腸内細菌においてである。というのは,多くの一般病原細菌では通常その形態学的および培養上の特性によって何菌であるかほぼ判定できるのに対し,腸内細菌においてはほとんどの場合,生化学的性状によらなければ確実な同定ができず,しかもそれらは日常の細菌検査でもっともしばしば遭遇するものだからである。チフス症,赤痢などの発生に際してはなるべくすみやかな治療と防疫処置がとられなければならないが,その診断の基礎となる細菌検査において,正規の方法で分離から同定までおこなっているのでは,最少限4日を必要とし,緊急の用にはたたない。このために,いかにしてその過程を短縮し,かつ確実にシゲラおよびサルモネラを摘発できるかという点に,この20数年来多くの学者の研究が集中され,かずかずの方法が考えだされた。現在常用されているクリグラの培地,TSI培地,SIM培地などはその結果として生まれたものである。
細菌検査におけるもう一つの問題は培地である。最近における乾燥培地のいちじるしい発達と普及は,細菌学研究室あるいは検査室の手数を軽減したとはいえ,まだ臨床検査室の実情に即しているとはいえない。乾燥培地がいかに便利なものであっても,1mlの培地が必要なときにも最少限100mlを単位としてつくらなければならず,残りは保存中に雑菌がはいったり,水分がなくなったりして使用できなくなることがしばしばある。
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