今月の主題 毒物検査
話題
"サリン"事件被害者への聖路加国際病院検査部の対応と臨床検査データ
村井 哲夫
1
Tetsuo MURAI
1
1聖路加国際病院臨床病理科
キーワード:
サリン
,
コリンエステラーゼ
,
PAM
,
Pralidoxime iodide
Keyword:
サリン
,
コリンエステラーゼ
,
PAM
,
Pralidoxime iodide
pp.1525-1528
発行日 2000年11月15日
Published Date 2000/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904619
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1.はじめに
1995年3月20日(月)午前8時40分,地下鉄築地駅に爆発事故があったとの連絡とともに1台の救急車により聖路加国際病院に事件被害者が運び込まれた.これを皮切りに,"サリン"事件の被害者が,ある者は救急車で,ある者はタクシーで,さらに状況の良い者は徒歩で次々と来院し始めた.当日,被害者の640名の診療に当たり,内110名は入院することになった.その後も来院者が続き,実にその数1,410名に達した.この間,心停止の状況で来院した3名の内2名は救命することはできなかったが,数名の重傷者を含めて全て臨床的に特別な処置を必要とする状況を脱し退院された.
当院は予想される東海地震などに備え,堅牢な建築,貯水槽の設置などとともに,臨時に補助ベッドを配置することによって多数の患者が収容できるよう,広い廊下やチャペルなどの空間の配置,さらにはところどころの壁面などに酸素の供給や吸引のための設備がなされている.サリン事件ではこれが役立ち,多数の被害者の処置をするとともに必要な患者を収容することができた.もちろん設備だけではなく,病院管理者の適切な指示と対処,医師,看護婦,コメディカルスタッフや事務系職員など,病院職員全員の多大な努力が大きな役割りを果たしたことは言うまでもない.
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