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コレステリルエステル転送蛋白(cholesterylester transfer protein;CETP)は血管壁から肝臓へのコレステロール逆輸送において重要な役割を果たしている.すなわち,HDLは血管内皮細胞より遊離型コレステロールとリン脂質を引き抜き,それらからレシチン:コレステロールアシル基転移酵素がエステル型コレステロールを合成し,それをCETPはVLDLやLDLなどのトリグリセリドと交換する.CETP欠損はエステル型コレステロールのHDLへの蓄積を招き,高HDLコレステロール血症を生じる.日本人研究者はCETP欠損研究で最大の貢献をなしてきた.CETP欠損はまた臨床検査の分野でも少なからぬ波紋を生じた.1990年代後半にHDLコレステロールおよびLDLコレステロールの自動測定試薬がいくつかの日本企業によって実用化されたが,CETP欠損は試薬間乖離の原因の1つとして検査室の関心を集めている1,2).
CETP欠損の原因として最初に同定されたイントロン14のスプライシング異常(Int 14G(+1) A)は日本人の約1%に見いだされる変異で,ホモ接合体では血漿CETPの活性,抗原ともに消失し,120~200mg/dlに及ぶ高HDLコレステロール血症を呈する3).まれであるが,エクソン10の309番目のグルタミンが終止コドンに置き換わる変異4),エクソン6の181番目のグリシンが終止コドンに置き換わる変異5),イントロン10の第2塩基におけるT G変異によるスプライシング異常6),などの日本人家系も報告されている.これらはホモ接合体ではCETP活性は完全に消失し,Int 14Aと同様に著しい高HDLコレステロール血症を呈する.
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