今月の主題 血管壁細胞
巻頭言
新しい疾患概念―血管病
池田 康夫
1
Yasuo IKEDA
1
1慶應義塾大学医学部内科学教室
pp.1073-1074
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904186
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内皮細胞・平滑筋細胞・間質細胞から構成されている血管は,以前は血液を身体の隅々に運ぶ単なる導管として理解されていたが,近年の血管生物学研究の進歩は血管を構成するこれらの細胞が実に多岐にわたる機能を有しており,さらに互いが情報を交換し合い,血管という1つの臓器単位として機能している可能性を明らかにしつつある.
血管内皮細胞は血管内面を被う一層の細胞として,血流の血管内皮下組織への接触を妨げる役割を果たしているが,実はそれ以上に重要な機能を有していることは衆知のことになってきた.内皮細胞は数多くの生理活性物質を産生しているが,それらは循環血液中に放出されて他臓器の機能を調節・修飾することのほか,他の血管壁構成細胞の機能にも重要な影響を及ぼし,循環動態・血圧の調節をはじめ,身体のホメオスターシスの維持に重要な役割を演じていると同時に,炎症性サイトカインをはじめ,血流の作り出すずり応力などの刺激に反応して,多くの病態形成の主役をなしていると言っても過言ではない.
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