学会だより 第9回日本臨床微生物学会総会
"今日から役立つ"臨床真菌検査の重要性を再認識して
白土 佳子
1
1聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院臨床検査部
pp.605
発行日 1998年5月15日
Published Date 1998/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903743
- 有料閲覧
- 文献概要
近年,血液疾患における化学療法の進歩により,特に白血病や悪性リンパ腫患者での寛解導入率は著しく向上している.しかしその反面,免疫能の低下による日和見感染症対策が問題となり,なかでも本症に関連した深在性真菌症は診断が困難であり,効果的な抗真菌剤も少ないことから,以上の疾患の予後において深刻な問題となる感染症として挙げられている.したがって,真菌症に対処するためにはより早期の十分な検査法や治療法が今日望まれている.以上の現状を踏まえ,本総会ではメインテーマとして"真菌症"が取り上げられ,招待講演でのラローンDH博士による"新たな病原真菌の出現"やシンポジウムでの"真菌症の診断","臨床真菌の検査"などの多数の注目すべき演題が取り上げられ,臨床における真菌検査の重要性が今日強く示唆されていることを肌で感じることができた.
ラローンDH博士の講演では,真菌検査において"検査は得られた検体が持つ情報を超えることはできない"という基本理念から,まず信頼性の高い検体の採取が重要となることを示唆し,①検査室は検体採取のガイドラインを設ける,②大部分の"汚染"は検体採取部位で起こる,③検査室への迅速な検体輸送と適切な培地への接種が必須,④臨床医と検査室とのコミュニケーションが最も重要であると述べられた.これは真菌検査のみではなく,すべての細菌検査において同様に重要であると感じ,さらに,新たな病原真菌出現の中でMalassezia furfurは今後注目すべき真菌症であると思われた.また,本講演のテキストは大変わかりやすく,直ちに日常検査に役立つものと感じられた.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.