今月の主題 標準物質
巻頭言
標準物質の供給がなぜ必要なのか
中 甫
1
Hajime NAKA
1
1福祉・医療技術振興会日本福祉総合医療研究所
pp.1601-1602
発行日 1997年11月15日
Published Date 1997/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903558
- 有料閲覧
- 文献概要
分析により得られる定量検査の結果には必ず誤差が含まれる.この誤差は測定の精密さに関連する偶然誤差と測定の正確さに関連する系統誤差に大別できる.系統誤差はさらに試料濃度に関係なく一定方向に一定比率で偏りが生じる比例系統誤差と,試料濃度に関係なく一定方向に一定の大きさで偏りが生じる一定系統誤差に分けて取り扱われる.近年の測定法,測定機器の著しい進歩と内部精度管理の普及と努力により施設内の測定の精密さは著しく向上している.一方,種々の精度管理調査の結果からも明らかなように,測定値の施設間差が無視できない項目が存在する.精密さが確保されている現在,これらの施設間差は正確さの偏りが原因で,誤差成分としては主として比例系統誤差である.このような比例系統誤差の主な原因は,測定値の正確さの物差しとなる標準物質に負うところが大きい.したがって,適切な標準物質が存在し,それを共有することにより定量値の正確さの保証が可能になることはいうまでもない.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.