特集 神経系疾患と臨床検査
Ⅲ.神経生理
3.その他の臨床神経生理検査
2)自律神経機能検査
国本 雅也
1
Masanari KUNIMOTO
1
1横浜労災病院神経内科
pp.1425-1427
発行日 1997年10月30日
Published Date 1997/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903516
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検査施行上の注意
一言で自律神経機能検査と言ってもその中には瞳孔,心循環器系,発汗,排尿機能などさまざまな機能と器官にまたがる検査法が含まれている.現在問題になっているのは各種の検査法がどれだけ自律神経そのものの活動を反映しているかという点である.昭和20年代から30年代にかけて盛んに用いられたエピネフリン(E)などの薬物静注試験は効果器の反応性をみるもので,ときには交感神経機能が低下しているがゆえに効果器の反応性が高まっており(脱神経性過敏),外因性のカテコラミンなどに過大な反応を示すことがある.そのため,評価判定がまったく正反対のものになってしまうことがあった.現在これらの薬物静注試験は用いられていないが,その後代わって登場したノルエピネフリン(NE)静注試験にも批判がある.それは自律神経系には多くの緩衝系が存在し,脱神経性過敏を示す場合にもその過大な反応を抑える系が作動してくることである.その顕著な例は圧反射系である.脱神経性過敏により外因性NEに対して過大な血圧上昇が起こり得る場合でも,それを圧受容体が感知して交感神経トーヌスを緩めれば圧上昇はさほどではなくなる.したがって,最終的な血圧変化は脱神経による血管過敏性のみによるのではなく,圧受容体の機能保持の程度も反映され,その解釈は単純には行えないことになる.こうしたことから自律神経機能検査はまた新たな再構築の時期を迎えていると言われる1).したがって,今回はその中でも比較的評価が定まっているものと最近のトピックを取り上げる.
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