特集 ウイルス感染症
I.臨床のための基礎知識
ウイルス感染症の病原診断
森田 盛大
1
1秋田県衛生科学研究所
pp.819-827
発行日 1988年10月20日
Published Date 1988/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200230
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I.はじめに
ウイルス感染症の実験室内病原診断はこれまで主にウイルス分離検査と血清学的検査によって進められてきたが,検査に多くの日時を要し,回顧的な病原診断にならざるをえないこと,検査にかなり高度な施設・設備や技術,あるいは多くの費用や労力などが必要であること,病原が確定しても細菌感染症のような有効な治療法が乏しいこと,一部のウイルス検査しか健康保険が適用されないこと,などから,他の検査のように広く普及していないのが実情である。しかし一部のウイルスについては市販の抗原検出キットを用いて検査時間をかなり短縮できるようになったし,また血清学的検査についても抗体検出キットや民間のウイルス抗体検査機関がかなり利用できるようになった。一方ヘルペスウイルスに対するacyclovirのようなかなり有効な治療薬も開発され,診断価値が出てきた。また風疹のような免疫保有検査やワクチン接種に伴う免疫保有検査のニーズも増してきた。このようにウイルス検査の需要を促進するような状況が少しずつ出てきたが,それでもなおかつウイルス感染症の病原診断検査は臨床側にそれほど身近になっているとはいえない1,2)。
このことから本稿では,検査成績を解釈するに当たっての注意点3)を含めて,ウイルス感染症の実験室内病原診断法について概略紹介する。ただし本稿は検査実務者を対象としたものではなく,実際の臨床に携わっている方々にウイルス検査の概要を理解していただくためのものであるので,詳細な手法は成書に譲りたい4〜6)。
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