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手根管症候群
下条 文武
1
1新潟大学第二内科
キーワード:
血液透析治療
,
β2―ミクログロブリン
,
アミロイドーシス
Keyword:
血液透析治療
,
β2―ミクログロブリン
,
アミロイドーシス
pp.348-349
発行日 1990年3月15日
Published Date 1990/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542900083
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手根管症候群とは,手根管内における正中神経の圧迫麻痺をいう.本症は,手根管部の外傷,職業的に手関節を反復して動かす場合,甲状腺機能低下症,末端肥大症,全身性アミロイドーシスなど,明らかな原因が存在するものと,原因不明の特発性のものに分けられる.
1975年WarrenとOtieno1)は,血液透析患者に手根管症候群が多く発症することを報告したが,その後,この疾患は長期透析患者の重要な合併症として注目されるようになった.透析による手根管症候群の成因として,まずシャントの存在による血行障害や尿毒症の代謝障害が考えられた.しかし,1980年Assenatら2)により正中神経周囲の腱・滑膜にアミロイド沈着が明らかにされ,以来,このアミロイドの形成機序について論争が起こった.当初は,透析膜で活性化された血中の補体C3a,C5aがインターロイキン(IL-1)を刺激してAAタイプのアミロイドーシスをひき起こすという仮説が提唱された.しかし,1985年,筆者ら3)のグループは,生化学的にアミロイド蛋白を分析し,β2―ミクログロブリンが主な構成蛋白であることを同定した.その後,この事実を裏づける報告が続き,通常の透析では除去されない分子量12000ダルトンのβ2―ミクログロブリンの体内蓄積が,本症の成因として最も重要であると考えられるようになった.
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