今月の特集2 良性腫瘍の病理と遺伝子異常
扉
涌井 昌俊
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1慶應義塾大学医学部臨床検査医学
pp.725
発行日 2022年6月15日
Published Date 2022/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542203027
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腫瘍といえば,“がん”すなわち悪性腫瘍を連想しがちですが,良性腫瘍も重要な存在です.良性腫瘍には,生物学的悪性度を有さないまま経過して腫瘍死に至らないとみなされるものと,悪性腫瘍への前段階つまり前がん病変に相当し,いずれ悪性に進行するとみなされるものがあります.また,悪性との境界を設けることが臨床に必ずしも有益ではないという見地から見直しが求められるケースもあります.いずれの良性腫瘍も鑑別診断は重要であり,従前より病理組織学の果たす役割は大きいです.さらに,近年では悪性腫瘍だけではなく良性腫瘍についても分子細胞生物学的研究が進展し,臨床像に関連する遺伝子異常が明らかにされつつあります.検査実地に応用されつつあるさまざまな最新の知見と臨床像・病理像を関連付けながら理解を深めることは,良性腫瘍の検査診断学の進化につながります.
本特集では「良性腫瘍の病理と遺伝子異常」というテーマを第一線で活躍される方々に解説いただきました.肝細胞腺腫,副腎皮質腫瘍,良性脳腫瘍,消化管ポリポーシス,下垂体腫瘍を取り上げるとともに,議論を掘り下げる意も込めて,最近,“潜在的な悪性腫瘍”に格上げされた褐色細胞腫・パラガングリオーマも今回あえて含めることとしました.“がん”の陰に隠れがちな存在に光を当てた本特集が読者の方々の理解の一助と検査の方向性のヒントになりますと幸いです.
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