心臓物語・7
心臓が疲れている—心房細動
島田 達生
1,2
1大分大学
2大分医学技術専門学校
pp.1040
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200948
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71年間,1回も休むことなく動き続けている私の心臓.あるときは1分間に100〜110回拍動していた.さぞ疲れていることであろう.健康診断で不整脈が出た.24時間心電図診断の結果,専門医は上室性期外収縮と診断した.“年を取ってくると,出てくる不整脈であり,心配することはありません.ただし,心房細動にならないように注意してください”と私に告げた.一般に,心房細動は60歳を超えると急に増えはじめ,70歳代で5%前後,80歳代では10%前後にみられる不整脈である.心房細動は,加齢に加えて,高血圧,高血糖,心臓弁膜症などの疾患があれば,さらなる負担が心房の筋肉にかかって起きやすくなる.さらに,飲酒・喫煙・ストレス・過労・寝不足・脱水なども危険因子となりうる.
心房細動は,心房のいたるところ,特に左心房にある肺静脈付近で1分間に300〜600回の不規則な電気信号が発生し,心房全体が小刻みに震え,心房の正しい収縮と拡張ができなくなる不整脈である.今回,電子顕微鏡でその謎に迫ってみる.実は,ヒトの肺静脈は,中膜の平滑筋細胞の外周に心房筋細胞が伸びている.さらに,肺静脈が心房に開口する部位は心房筋細胞が網状配列し([1]),リエントリーが起こりやすい細胞構築をしている.心房細動をもつヒトの心房では線維化が起こり,心房筋細胞間結合部(介在板)が離開し,同調して収縮・弛緩ができる状態ではない([2]).さらに,筋原線維の縮小と減少が起こり,明らかに収縮力の低下がみられる.
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