心臓物語・2
心臓に2種類の心筋細胞がある
島田 達生
1,2
1大分大学
2大分医学技術専門学校
pp.468
発行日 2016年5月15日
Published Date 2016/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200808
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図[1]は,ヘマトキシリン・エオジン染色したヒト心臓心室の心内膜側の光学顕微鏡写真である.心内膜側に,作業心筋とは様相を異にした細胞群がある.これらは一般にPurkinje線維と呼ばれ,心室筋細胞よりもやや大型で,エオジンで赤く染まる筋原線維に乏しい細胞である.1845年,J. E. Purkinje(チェコ)は 最初に肉眼で羊心臓の心室内壁に灰白色の網状構造をみつけ,続いて,顕微鏡観察で心筋線維と同様の横紋をもつ特殊心筋線維を発見した.ちなみに,小脳の神経細胞を“Purkinje細胞”といっている.その後の研究ではPurkinje線維の機能的意義は不明とされ,心内膜側の動き,心筋細胞の幼弱形,または病的状態などとさまざまな諸説が唱えられていた.
1906年に田原淳は,ヒトを含む哺乳動物心臓の肉眼観察と連続切片の光学顕微鏡観察を行い,長年の謎であったPurkinje線維が刺激伝導系(房室連結筋束)の終末展開枝であることを突き止めた.田原は,刺激伝導系特殊心筋の特徴の1つに結合組織(膠原線維)が豊富であることから,ヘマトキシリン・ワンギーソン染色を行った(図[2]).膠原線維を酸性フクシンで赤く,筋原線維をピクリン酸で黄色に染めると,羊Purkinje線維の筋束は心室筋(作業心筋)と結合組織によって隔てられていることが一目瞭然である.
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