表紙の裏話
植物細胞から医用画像解析まで
朽名 夏麿
1
,
桧垣 匠
1
,
馳澤 盛一郎
1
1東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻
pp.702
発行日 2013年7月15日
Published Date 2013/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542103481
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- 文献概要
今月号の表紙は植物の細胞であり,その名をタバコ懸濁培養細胞BY-2という.なぜ植物が「臨床検査」誌にと思われるかもしれない.植物は太陽から降り注ぐ光のエネルギーを化学エネルギーに変換し蓄える(光合成独立栄養).一方,人をはじめ動物はその化学エネルギーを直接的・間接的に消費することで生存している(従属栄養).それゆえ人類が抱える食糧問題やエネルギー問題への足がかりとして,植物科学は医学とならび重要な使命を帯びる.また培養細胞であるBY-2については医療用の“蛋白質生産工場”としても着目されている.
筆者らの研究グループは高い増殖率など優れた特色をもつBY-2細胞を研究材料として世界に広めつつ,植物細胞の増殖や生長のメカニズムを明らかにすべく緑色蛍光蛋白質などによる細胞骨格やオルガネラの可視化を行い,その構造や動態の評価に取り組んでいる.こうした研究では多くの画像を客観的に速やかに評価するため,画像解析が有用である.しかしバイオメディカル分野で用いられる撮像法や可視化対象は多様であり,撮像条件の設定次第で画像の様相は大きく変動する.そのためおのおのの生物・医用画像に特化した解析ソフトウエアを逐一開発することは容易でなく,目視や手作業に頼らざるを得ない状況である.
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